キャッシュレス化に向けた市場調査①

サービス企画

こんちにちは、OGTです。

現在日本はキャッシュレス決済比率が約20%程度と言われており、大阪万博の2025年を目処にキャッシュレス決済比率40%を目標に掲げています。

このような大きな政府方針に従って、市場動向・競合調査・分析するのは重要ですが、なかなか時間が取れなくてキャッチアップできる人はそうそういません。

今日の記事では、出来るだけ身近な例を挙げて、キャッシュレス化に向けた全体像と課題を掴めるように整理します。私も20年近くクレジット決済システム開発に従事しており、新入社員研修として使っている資料をベースにしていますので、理解いただける内容だと思います。

それでは、そもそもキャッシュレス化できていない所は何処か?から解説していきたいと思います。

病院

大きな大学病院では既にクレジット導入しているところも見かけますが、全体としては普及率50%程度となります。さらに病床数19以下の一般診療所では16-17%程度というのは実態です。

  • 一般的にカード決済においては、カード会社に対する加盟店手数料が掛かること
  • 高齢者が多く、クレジットカード払いで逆に時間が掛かる(暗証番号忘れなど)
  • 診療所自体の回転数が低く、現金管理自体に負担を感じない

利用者からすると、カード決済により利用履歴が残る・医療控除と連動しやすい・高額医療費の負担軽減(ただし分割金利は控除に含まれない)とメリットはあります。

診療所単体では手数料負担が大きいので、医療側のコミュニティと利用者側のコミュニティを結ぶサービスが親和性が高いと思います。

駐車場

最大手のパーク24の調査(2019)によると、利用者の6割はいまだに現金払いのようです。

結構導入が進んでいる印象を受けてましてましてたが、そもそも現金以外に対応した機器メーカーが少ないようです。いわゆる無人の精算機というのはクレジットカード取扱(ICチップ付カード)に対する規定が厳しく、カードを取り込んだまま排出されない場合などの想定外対処も考えないといけません。

ただ、結局駐車場というのは最終的に出庫ゲートが開けばいいだけなので、スマホで事前決済しておいて、QRなんかを出庫ゲートに翳せば開くようなものでもいいかなと思います。

既に三菱プレシジョンなどで販売されていますね。

2019年度の調査では、駐車場大手4社で3,773億程度、内3,000億はパーク24が占める構造になっています。

パッと見るとパーク241社で業界標準化できるんじゃ無いかと見てましたが、そもそも路外駐車場には駐車場法があり、500平米(40台スペース)以上は都道府県への届出が必要だが、それ以下は不要のようです。なので、実態の市場規模と運営事業者の顔が見えないという業界です。

このような業界であり、参入障壁が比較的低いためスタートアップ企業によるサービス競合がしばらく続くと見ています。

役所

基本的に現金払いです。コンビニでも固定資産税などの納付金は基本現金払いになります。

ちょっと調べましたが、自治体によってはクレジット利用が可能です。

東京23区では、固定資産・都市計画税、自動車税などもクレジット払いOKでした(東京都主税局HP参照)。難点は決済手数料(10,000円で73円)が掛かるのと、確定申告時に必要な納税証明書が出ない(追加で400円必要)ことです。

東京都の場合、トヨタファイナンスが納付代理業者みたいなことをやっていて、納税者の貸倒リスクを手数料に含んでいます。与信系業務では仕方ないことです。

ただ、2020/6からはなんとPayPay/LinePayで納税できるようになっています。主税局のリンクを貼っておきます。(スマートフォン決済アプリによる納付について

PayPayであれば決済手数料はゼロで、ポイントまで付与されるようです。ただし、残高チャージしておかないといけません。

東京都やるなと思いましたが、納税証明書の発行については、申請書を印刷して手書きで送付しないといけないようで、そもそもDX化しないといけない役所事務手続きが他に沢山あるようですね。

なので、ここへのアプローチとしてはキャッシュレス決済単体ではなく、納税における申請・決済・承認・証書までの情報統制を目的としたオペレーションシステム全体を提案する方が需要に合致します。

自動販売機

都心ではすっかり見かけなくなりましたが、それでも現金のみの自動販売機はあるようです。

この手の小額決済系は電子マネーと親和性が高いので、今後も伸びると思います。

いまはある程度マネーの種類も出尽くした感がありますが、ハードウェアの規格・形状は変えられないので、”バーコード専用(xxPay)”とかアプリのみの追加で対応できる決済手段がメインになるかと思います。

学校

キャッシュレスといえば一部キャッシュレスなのかもしれませんが、

特に国公立では現金または口座振り込みしか受付ないようです。入学検定費、入学金、授業料、同窓会費、XX積み立て、XX寄付金 など、教育に関わる出費って大変ですね。

そう言えば、近畿大学で昨年オープンした学生食堂では、スマホオーダー&キャッシュレス決済できる初の次世代学食ができていました。近畿大学はLinePay・メルペイなど導入していて、学生が積極的にキャッシュレス決済に触れる場を作ってますね。関東の大学も是非取り組んで欲しいものです。

中小規模の個人経営店

路地裏の飲み屋や、小さなラーメン屋など、結構現金しか使えないところがあります。

串カツ田中もほぼ現金払いのようです(一部店舗のみカード払可)

やはり、加盟店手数料が重くのしかかっているようです。売り上げによるらしいのですが、加盟店手数料が3-5%程度で、飲食の営業利益は10%以下ではとても厳しい。何もしなくても利益の半分近くをカード会社にもっていかれるというのは厳しい。

海外では分割・リボ払いの文化で、利用者・加盟店にバランスよく負担していますが、

日本はほぼリボは使わないので、加盟店だけに負担を強いる構造になっています。

イギリスやオーストラリアでは、お店が利用者に加盟店手数料を請求することが認められています。海外でお買い物するとサーチャージ(surcharge)と呼ばれる手数料がレシート印字されていることがあります。

日本は世界的にみても歪な成長を遂げてきており、国内カード会社の収益構造を見ると加盟店手数料が40%も占めてします。(https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabizi/result-2/h27/pdf/h27report09.pdf)

カード会社も大変で、アクワイアラ(加盟店開拓するカード会社)などはイシュア(カード発行会社)やブランド(VISA、Masterなど)に対する手数料や、システム利用料(CAFIS、JCN)や、加盟店管理(指導、運用)によって、収益性がとても低い構造(営業利益率が1-5%程度)と言われています。

これについては別の記事で書こうと思います。

その他

とはいえ、一斉停電したり、読み取り機器の故障というのもあるので、完全に現金自体が無くなるとは思えません。さらに特に小さなお店ほど負担が重くのし掛かる構造になっているので、無理強いできないところもあるかと思います。

ただ、国が推進する以上は、役所くらいはキャッシュレス化しておけとは思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

キャッシュレス化というお題目を例に身近にある例で現状・課題を整理してみました。(キャッシュレス化)に対して(キャッシュレス化してない業界)という切り口で調査・分析してみました。

興味がある部分があれば、自分で深掘り調査してもよいし、違う仮説を立てても良いかと思います。

こういうのを繰り返して思考訓練することで、結論を出す速度が早くなると思いますので、是非自己学習に励んでください。

それではまた

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