世界最強の未上場企業Stripeに迫る

サービス企画

長く決済ビジネスの世界に身をおいていますが、こんなに注目を浴びた決済代行企業は初めてかも知れません。

先日、米スタートアップ企業であるStripe(ストライプ)が、評価額950億ドル(約10兆円)となったことを発表しました。

これにより、イーロン・マスク率いるSpaceXを抜いて、未上場企業としてはトップの時価総額となりました。

年内にIPOの噂もある超大物ルーキーなので、何故ここまで評価されるのか?今後の将来性はどうなのか?も含めて分析していきます。

1.企業概略

Stripeは2011年創業の、決済インフラを提供する【決済事業者】です。

本社はサンフランシスコにあり、社員数2500名以上の企業となります。

すでに14のグローバルオフィスを持ち、日本(東京)にもオフィスがあります。

2.ビジネスモデル

一般的にはStripeという企業を知らない人の方が多いです。そもそも決済インフラのような裏方企業がここまで評価を上げてきた理由を分析してみます。

(1)決済インフラ

インターネット上では、たくさんのサイトでクレジットカードを使った決済が可能ですが、Stripeではその決済のための手段を提供しています。

現在ではネットでの決済は当たり前なのですが、Stripe創業前は結構面倒だったようです。

カード番号や有効期限を入力しただけで購入できてしまうため、システムには高度なセキュリティ対策が要求されるので、どうしても高コストにならざるを得なかったようです。

Stripeより前にはPayPalという同じ決済インフラ会社がありましたが、高いセキュリテイを担保するため、事前にユーザアカウントを登録しないといけないという面倒臭さがあり、カードで決済しようとしている利用者が面倒で離脱してしまうことがありました。

(2)何が新しいのか?

こうした”決済システムの複雑さ”、”使い勝手の悪さ” を回避するために、徹底的に贅肉を削ぎ落とした簡素なAPIにこだわったため、開発者向けに歓迎されるサービスとなりました。

システム的には、Amazonのサイトで”いますぐ買う”ボタンをクリックするときに、Stripeから提供されるAPIを実行するイメージです。

決済APIは簡素であることが非常に重要で、インターネットでよく起こる異常ケースとして

”購入ボタン”押してる途中でネットワークが切れた

”番号入力を連続で間違えた”

”決済の途中で画面放置した”

などが、API側で全部やりくりしてくれれば、利用企業側の開発はAPIを呼び出すだけになります。

これが開発・運用コストを下げるための最重要ポイントで、Stripeが強烈に支持されている理由になります。

(3)クライアントは?

調べると、Amazon、ShopifyといったECや、Google、Microsoftのようなテック企業、Zoom、SalesForceのようなSaasなど、超一流の企業が名を連ねます。 

後で解説しますが、料金体系としては決済成立毎に3.6%の手数料のみで、初期費用や月額は不要です。

とはいえ、Amazonの売上を考えると手数料収入がとてつもないことが想像できますよね。

(4)競合は?

決済代行事業は、PCIDSSなど各種認定を必要であるものの、事業内容に色が出にくく、長らくレッドオーシャンでした。

大きな転換点はECであり、大規模ECから始まって、現在は個人でもEC利用できるようになり、ニーズが多様化しています。

Adyen

Stripe

PayPal

利用審査

あり

なし

あり

月額利用料

不明

0円

3000円

手数料

クライアント別

3.6%

3.6% ~+40円

クライアント

NetFlix etc

Amazon,Google etc

eBay

セキュリティ

3Dセキュア

3Dセキュア

Stripe Radar

3Dセキュア

バックヤード

Adyen Custormer Area

Stripe Dashboad

入出金、取引履歴、レポート

Stripe Radar:  100万を超えるグローバル企業のデータにより機械学習。あらゆるタイプのビジネスにおける不正取引をブロックする仕組み

Adyenが大規模クライアントをターゲットとしている一方、Stripeは中小規模向けを主戦場としています。その割にクライアントとしてAmazon、Google、Microsoftを抱えているのは、Stripeの持つ多様なツール・技術とビジネスモデルの簡潔さが理由にあると思います。

よく、ShopifyやBASEとも比較されていますが、これらはECサイトそのものを提供しているイメージです。

BASEは会員登録さえすれば、マーケットプレースを割り当ててもらるので、そこでしか販売できません。なので、結構凝ったサイト設計にしたり、支払い方法(月額、クーポン利用、、)も凝りたい場合には不向きです。

3.欠点はないのか

我々が知らないうちに圧倒的なシェアを誇るStripeですが、懸念点や課題はないのか調べてみました。

そもそも決済代行事業というのは真似されやすく、すぐに価格競争に陥ります。更にStripeはクライアント側のシステムへの導入コストが低い分、離脱するハードルも低いように見えます。

カード会社へ渡す加盟店手数料が2-3%で、Stripeに決済手数料3.6%も払うのは結構キツいですね。これはStripe以外も同じです。

なので、真の問題は”カード決済したくてもできない”層というのが埋没していることなのでは無いか? と考えたのがStripeの企業ポリシーです。

Stripeのミッションは”インターネットのGDPを上げる”です。

世界にはまだまだ銀行口座が無い層も沢山いて、新興国における金融サービスにも積極的に投資したり、提携開発していたりします。

ナイジェリア・セネガル、メキシコ、パキスタン、フィリピンなど、世界中の新興国へのコミットメントを強めています。

4.日本への展開

日本にもStripeのオフィスがあります。そもそも日本は加盟店手数料が高すぎる問題があり、キャッシュレス比率30%弱の現状を鑑みると、潜在的な市場規模は少なくとも倍はあると考えられています。

そういった背景から、日本はStripeの中でも最重要市場として捉えられています。

またコロナも追い風になり、ECは推奨ではなく必須のサービスと認識されるようになったのも大きいです。

2018年にはJCBと業務提携し、取り扱い可能となりました。また、三井住友カードとも業務提携しており、多通貨決済サービスを提供するようになります。

5.まとめ

決済サービスという裏方事業を主戦場にした企業が、SpaceXなどの花形企業をアウトパフォームする理由が分かった気がします。

  • Stripeは決済インフラ事業者である
  • 開発者目線で徹底的にムダを削ぎ落としたAPIを提供
  • その結果、導入コスト・運用コストも抑えられる。
  • クライアントは超大手テック、Saas企業が並ぶ。
  • 市場の開拓にも余念がなく、アフリカ、北中米、アジアへも積極的

ほぼ欠点らしいところが見つからない、素晴らしいスタートアップ企業ですね。

今は地合いが悪いですが、Stripeは年内にもIPOの噂があるので、余力があれば買ってみたいと思います。

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