システム開発分野は慢性的な人材不足ですが、ここには大きな認識違いがあります。
これまでのプロジェクト経験から、大量のBPさんを招き入れましたが頭数に勘定できるのは1割いれば良い方で、BPへの教育や管理に稼働が嵩んでしまいます。
つまり、人材はいるけども”戦力として計算できる人材”が不足しているという意味です。
1.人材不足と言われる業界構造
プロジェクトを構成するメンバは、プロジェクトマネージャーを頂点にして、配下にチームリーダー、プロパSE、BPという構成になります。
最近はプログラマーが不足しているということで、プログラミング副業に手を出している人も多いと思いますが、現場レベルでみるとちょっと認識が違うのかなという印象です。
この業界における人材不足の実態を紹介しますと、
(1)慢性的なマネジメント不足
マネージャーは営業と同じ動きをすることが多く、クライアントとの交渉・折衝、またプロジェクトのコスト・要員調達・現状の整理などに忙殺されています。
特にクライアント様と会話できるマネージャーは重宝される一方、内部のメンバの育成やケアが十分に行き渡らず、人材が育たないというケースが多いです。
これまで10年以上プロジェクトマネージャーを経験してきましたが、プロジェクトがスケジュール超過やシステムトラブルが発生すると、急場を凌ぐために要員を追加して余計に管理稼働が掛かる構造になります。
(2)立場の違う関連プレーヤーが多すぎる
とにかく、システム屋の話は分かりにくいと言われます。
とくにクライアント側の立場からすると、”結局何が出来るのか”だけを知りたいのに、回りくどくシステムの仕様を話したがります。
逆に、営業の話はシステム屋からすると、漠然としてて、クライアントが何を求めているのかをシステムにプロットすることができません。
立場が違う人との間で会話って噛み合わないから、連絡するだけでも大変な労力が必要です
これを解消するには、システムが分からない人に話する(抽象化)とシステム現場へ要件を伝える(具体化)という能力が必要になります。
(3)過剰な品質の作り込み
百貨店や家電量販店のように、対面でお客様対応しているシステム(POSレジ等)の品質基準をご存知でしょうか?
数万回に1回しか発生しない(再現状況が分からない)ような問題でも、完全にゼロにするまで潰しこみを要請されます。どこまで対応するかを仕切らずに進めると、原因分析と改修をひたすら繰り返す構造になります。
ちなみに現場では、クライアントの怒号が飛び交う中で要請を強いられるわけで、こんなに簡単に割り切れません。
2.人材不足解消に向けて考えるべきこと
(1)これまでの日本企業構造と今後
日本ではSIerと呼ばれる独自の形態があり、クライアント様専用のシステムをオーダーメイドする方式が主流でした。
クライアントに成り代わって、複雑な業務プロセスやシステム異常時・停止時の復旧手段などに精通したSEを抱えておく必要があり、大半のキャリアを1クライアントに従事する社員も珍しくありません。
このため、多くのシステム開発会社は部署・部門に社員が帰属するメンバー型の形態を取っており、旧態然としたシステムとコストの高止まりを招いていました。
我々をはじめ、既に多くの企業では複数のプロジェクト・部署をローテーションするのが当然となっており、積極的に中途採用を図ったり、副業を推進しています。
(2)確保しておくべき人材
今後は間違いなくプロジェクトとジョブを渡り歩く人材が評価されると思いますが、それ以上にそういうメンバを束ねるリーダーの方が重要になってきます。
特に国籍や時短(育児)などのダイバーシティを許容する方向に向かっていくので、それらをマネジメントする人材が圧倒的に不足すると予想しています。
(3)リソースのユニット化
こういうった背景から、”個人のスキル”を高めることが最優先で、すぐにでも転職や副業に乗り出す人が多いと思います。一方、雇用する側からすると、ひとりひとり会社内のルールやお作法を指導する余裕が無いのが正直なところです。
理想はリーダーを一人立てた3,4名のユニットでプロジェクトに入ってもらうことですね。
もちろんある程度プロジェクト規模が大きくないと意味がないので、全てに当てはまるわけではありません。
3.評価される人材
BPさん側の新規メンバについて面接依頼を受けることが多いですが、こういう人がいたら間違いなく採用するという観点を出してみました。
(1)人当たりが良い
技術スキルは当然必要ですが、もっと重要なのが対人スキルです。
プロジェクトには沢山の人が関わりますので、”挨拶ができる”・”いつも穏やか”など、社会人以前に人として感じがいいことが重要です。
(2)国語力がある
極論ですが、プログラマーでも無い限り、システムに詳しくなくても良いと思ってます。
クライアントからの問い合わせや要望に対して、何を言ってて・何に困っているのかを注意深く話を聞くことや、それを社内の人間にわかりやすく伝えるという能力が大事です。
BPさんの面接で、過去経歴をヒアリングしているのは、予備知識がなくても分かる説明ができるのか?という点でしか見てません。
(3)手を抜ける人
これはさすがに面談では分かりませんが、”指示どおりに作業する人”よりも”指示そのものを疑う”方が生産的です。どうやって手を抜けるのかを考えてる人は、そもそもやる必要があるのか?何のために必要なのかを常に考える人は貴重です。
生産性とは労力を減らすことではなくて、そもそもやらなくても良いならば労力すら掛けなくても良いです。
5.まとめ
ほぼ間違いなく転職や副業が当たり前の時代になり、市場に人材は溢れかえるが使える人材は争奪戦になります。
特にメンバを束ねるマネージャーに掛かる比重が高くなりますが、出来る人には限りがあります。また、給料変わらないのにそこまでコミット出来ませんよね。
逆の立場で、いま副業を考えているのですが、こういうマネジメント自体任せてもらえるようにユニットでリソースを提案するのが一番効果的なのではないかと考えています。
今の会社に売り込もうかな。。。
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